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公証人役場の業務内容

 公証に関する事務は,私権を保護するとともに将来の民事上の紛争を未然に防止することを目的とする予防的司法制度としての公証制度に関する事務であり,法務大臣が任命する公証人の指導監督を法務大臣(法務局長,地方法務局長)が行っています。
 
公証人と公証役場
 公証人とは,後記第2で御説明します国の公証事務を担当させるために,法務大臣が任命する実質的な公務員であると解されております。「実質的な」というのは,公証人は国から給与や補助金など一切の金銭的給付を受けず,国が政令により定めた手数料収入によって事務を運営するという制度の性格に由来します。つまり,公証人は,身分は実質的な公務員ですが,弁護士,税理士,司法書士などと同様に独立の事業者であるというのが公証制度の特徴です。
 公証人は,裁判官や検事,法務局長などを長く務めた法律実務経験豊かな者の中から法務大臣が任命しており,全国の法務局・地方法務局に所属し,所属する法務局・地方法務局の管轄区域内で執務します。
 公証役場とは,公証人が執務する事務所のことです。
 平成12年9月1日現在,全国で公証人数は543名,公証役場数は299箇所です。
公証事務
 公証人の取り扱う公証事務,言い換えると公証人が提供できる法律サービスには,次のような種類があります。
 公正証書の作成
(1)  概説
 公正証書とは,私人(個人・会社など)からの嘱託により公証人がその権限にもとづいて作成する文書のことです。
 一般に,公務員が作成した文書を公文書といい,私人が作成した私文書とは区別されています。公文書は,公正な第三者である公務員がその権限にもとづいて作成した文書ですから,文書の成立・内容ともに真正であるとの強い推定が働きます。これを証明力ともいいます。文書の成立や内容が真実であるかどうかに争いがある場合,公文書であれば真実であるとの強い推定が働きますので,相手方の方でそれが虚偽だという立証をしない限り,この推定は破れません。その立証は困難な場合が多く,公文書が私文書に比べて証明力が高いというのは,このような効果を指しています。
 公正証書は,公文書として証明力が高いばかりでなく,金銭債務,すなわち金銭の支払を目的とした債務についての公正証書は,債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述が記載されている場合は執行力を持っています。執行力というのは,債務者が約束に違反して支払をしなかった場合,強制執行ができるという効力をいいます。
 執行力は,通常,裁判所に訴えを提起し,勝訴の判決が言い渡され,しかもその判決が確定しなければ発生しません。訴えを起こして確定判決を手にするまでには,相手方の対応にもよるのですが,通常,長い期間と多額の出費を余儀なくされる上,やっと確定判決を得たとしても,相手方は既に破産状態で,強制執行しても何も得られないという場合が少なくありません。和解調書,調停調書にも執行力が認められていますが,何れにしても裁判所を経由しなければなりません。ところが公正証書を作成しておけば,裁判を経ないでも執行力の付与を受けることができます。したがって,大切な権利の保全とその迅速な実現のために公正証書の果たす役割は非常に大きいのです。
(2)  公正証書の種類
 契約・合意に関する公正証書
 土地や建物の売買,賃貸借契約,金銭消費貸借契約などの公正証書が一般的ですが,贈与,委任,請負など民法が定める典型的な契約以外に土地の境界線をお互いに認め合うための合意,チェーン店経営に関する契約など様々な契約・合意の公正証書があります。どのような内容の契約や合意でも,法令や公序良俗に反しないかぎり有効ですので,公正証書を作成することができます。
 また,平成12年3月1日から定期建物賃貸借制度が借地借家法の一部を改正する法律によって創設されました。この制度は,期間の定めがある建物の賃貸借契約をする場合,公正証書等の書面によって契約する場合にかぎり,契約の更新がなく期限の到来によって契約が終了するものと定めることができるようにしたものです。
 最近は,離婚の増加という世相を反映して,離婚に伴う慰謝料や子供の養育費の支払を公正証書にしておくケースが多くなっています。その他,任意後見契約があります。これは,高齢化社会への対応と障害者福祉の充実を目的として平成12年4月1日から実施された成年後見制度の一環をなす契約であり,例えば痴呆などにより判断能力が不十分な状況に陥った場合に備えてあらかじめ後見人を選任し,その後見人に自分の生活維持に必要な事務や療養看護のための手続,財産管理事務などを代わってしてもらうための契約で,必ず公正証書によるものとされています。
 遺言公正証書
 遺言は,自分の遺産を誰にどのような割合で残すのかを決めたり,自分を虐待するなどした相続人を排除したり,非嫡出子を認知したり,先祖のお墓を誰に守ってもらうかを定めたりするなど,自分の死後のことをきちんと決めておくための行為です。一定の方式に従ってなされた遺言については,法律はその意思どおりの効果を認めますので,相続を巡る紛争の防止と権利の迅速・的確な移転に大きな力を発揮します。
 遺言の方式には数種類の方式がありますが,一番利用されているのは自筆証書遺言と公正証書遺言の2種類です。法律は厳格な方式を定めていますので,自筆証書遺言の場合はその方式に従っていないため無効であったり,その内容が自分に不利な内容であると見た相続人によって破棄,隠匿されるなどの危険があります。その他,必ず家庭裁判所の検認という手続が必要である上,遺言の真意を巡って相続人間で争いが生じる場合が少なくありません。これに対して,公正証書遺言は公平かつ中立な第三者である公証人が法定の方式に従って作成するものであり,このような心配や危険性はなく,家庭裁判所の検認手続も不要ですので,自筆証書遺言よりもはるかに安全・確実なものです。
 遺産相続をめぐる争いが増加しています。全国の家庭裁判所で取り扱った遺産分割調停事件の新受件数を見ると,平成元年に7,047件であったものが,同11年には8,950件(概数)と,11年間で約27パーセントも増加しています。そして,これと連動するように遺言公正証書の作成件数も増加の一途をたどっており,平成元年に約4万件であったものが,同11年には約5万8千件と,最近11年間で約41パーセントも増加しています。
 なお,従来は聴覚や言語機能に障害のある方々は,法律上公正証書による遺言の作成ができませんでした。それは,公正証書遺言は公証人が遺言者の話した言葉を聞き取り,その内容を文書にまとめ,それを遺言者に読んで聞かせて作成するものと方式が定められていたからです。しかし,こうした障害のある方々にも公正証書遺言をすることができるよう改正され,平成12年1月8日から改正法が施行されています。
 相続を巡る争いを未然に防止し,権利の迅速な移転を可能にするための有効な方策として,公正証書遺言を作成しておく実益は極めて高いといえます。
 事実実験公正証書
 権利義務や地位に関係する重要な事実について公証人が実験,すなわち五官の作用で認識した結果を記述する公正証書を事実実験公正証書といいます。例えば,土地の境界の現況がどうなっているかを公証人が現地へ行って確認した結果などを記載します。将来の争いを防ぐ目的で現状をあるがままに確定しておくためのものですから,一種の証拠保全手段です。銀行の貸金庫の中に何が入っていたかを明らかにしておくとか,特許の関係で発明や使用の先後関係を証明する物品や書類・記録などの存在を明確にして後日の訴訟に備えるとか,様々な目的のために活用できます。
 その他,人の意思や供述の内容もこの証書で証拠化できます。例えば,いわゆる尊厳死の意思表示とか,企業秘密に関する資料を持ち出した者について,その動機や経過などに関する供述などもこの事実実験公正証書の中に収めることが可能です。将来の紛争を防止するという目的のために,非常に活用範囲の広い公正証書です。
 確定日付の付与
 公証役場には,確定日付印というものが備え付けられています。私署証書,つまり私人の署名又は記名捺印のある文書にこの確定日付印が押印されますと,その私署証書がその日付の日に存在したという証明になります。民法では,証書に確定日付がなければ,その証書は日付に関するかぎり,第三者に対して完全な証拠力がないと規定していますので,確定日付のもつ意味は極めて重要です。
 なお,確定日付については,民法第467条や民法施行法第4条以下を御参照願います。
 認証
 認証とは,ある行為又は文書が正当な手続・方式に従っていることを公けの機関が証明することで,公証人による認証には次のようなものがあります。
(1)  定款の認証
 株式会社・有限会社・相互会社・信用金庫を設立するには,定款という書面を作成し,その書面に公証人の認証を受けなければなりません。定款の認証は,本店所在地の都道府県内に公証役場を設置している公証人の事務となります。
(2)  私署証書の認証
 署名又は記名捺印の認証
 署名又は記名捺印の認証は,当事者が公証人の面前で署名又は記名捺印した場合や当事者が公証人に対してその署名又は記名捺印は自分がしたものであると自認した場合などに公証人が私署証書に付与するもので,一般に書類の認証というときはこのことを指しています。私署証書の認証は,日本語だけでなく,外国語による私署証書にも可能です。
 署名又は記名捺印に認証を受けると,その私署証書は本人が作成したものであるという証明になり,証書の信用性が高まります。特に,我が国の個人あるいは法人が印鑑登録証明書の制度を持たない外国で生活し又は企業活動をする場合,身元保証書や契約書などに公的な信用を付与する制度として,極めて重要な役割を果たしています。
 宣誓認証
 宣誓認証は,私署証書の作成者本人が公証人の面前でその証書の記載内容が真実であることを宣誓した上,署名又は記名捺印し,または,証書の署名又は記名捺印を自認した場合に公証人がその私署証書に付与するものです。必ず本人が公証役場に来て公証人の面前で宣誓することが条件となります。アの署名又は記名捺印の認証では,文字どおり私署証書の署名又は記名捺印の真実性が認証されるだけで,その証書の内容の真実性までは認証されません。宣誓認証は,国の機関である公証人が本人に「証書の内容が虚偽であることを知りながら宣誓した場合には過料に処せられる」ことを告知した上でなされるものであり,本人もそのようなリスクを負ってまで虚偽の内容と知りつつ宣誓することはないであろうとの理由などから,証書に記載された事実の真実性が保証されることになります。
 この制度は,平成10年1月1日から実施された比較的新しい制度ですが,署名又は記名捺印の真実性から一歩進んで内容の真実性の保証を求める社会の需要にこたえようとするものであり,私署証書の成立・内容に公的信用性を付与する制度として,国の内外を問わず,広く活用されることが期待されます。
 
さらに詳しく知りたい方は公証人会ホームページへ
 
 
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